
国立人類学博物館の歴史
1964年に開館したメキシコ国立人類学博物館(Museo Nacional de Antropología)は、世界最大規模の考古学・民族学博物館として知られ、メキシコシティを訪れる旅行者にとって欠かせない観光スポットのひとつです。
そのルーツは、19世紀後半、メキシコシティ中心部にある「国立文化博物館(旧・メキシコ国立博物館)」にまでさかのぼります。
考古学への関心が芽生えたきっかけ
きっかけは、スペイン植民地時代の1790年8月13日。メキシコシティの憲法広場(ソカロ)で、アステカ神話に登場する「コアトリクェ」像が発見されました。わずか4ヵ月後の12月には、現在も人気展示物である**「太陽の石(Piedra del Sol)」**も発見されます。
この頃から、スペイン到来以前のメソアメリカ文明への関心が少しずつ高まり、太陽の石は当時のカトリック教会の命で、メトロポリタン大聖堂の壁面に埋め込まれることに。この出来事が、メキシコ考古学の出発点とも言えるでしょう。
考古学博物館の誕生へ
本格的に遺物の収集が始まったのは1865年、オーストリア出身のマクシミリアーノ皇帝が統治していた第2次メキシコ帝国時代。混乱の中で博物館としては機能していなかったものの、この時期に後の「メキシコ国立博物館」が形成され始めます。
皇帝の処刑後、1867年に政権へ復帰したベニート・フアレス大統領のもとで、ようやく一般公開が実現。これが現在の国立人類学博物館の前身となります。
当時の展示は現在のような整然とした形ではなく、巨大な石像が中庭にそのまま置かれていた時代でした。転機となったのは1887年の独立記念日(9月16日)。当時のディアス政権のもとで「石像の部屋(Sala de Monolitos)」が設置され、**太陽の石やチャルチウトリクェ像(テオティワカン出土)**が正式に展示されるようになります。
研究・教育機関としての発展
この流れの中で、考古学や民族学の研究機関も誕生します。国際的な学術拠点として**「アメリカ考古民俗学国際学校」が創設され、後にアルフォンソ・カソ(Alfonso Caso)**など、著名な考古学者を輩出することになります。
その後も進化を続け、1909年には自然史などのコレクションは別の博物館へ移され、ここは「国立考古学歴史民俗博物館」と改名。以後30年間その名を持ち続けました。
文化財保護の体制強化と現代への継承
1939年には、メキシコ国内の文化財保護と調査研究を担う**国立人類学歴史研究所(INAH)**が発足。「INAH」は現在もすべての遺跡や博物館に関わっており、文化の継承と発信の中核を担っています。
また、同研究所から派生する形で、**国立人類学歴史学校(ENAH)**が設立され、多くの専門家を育成。現在でも、ENAH出身の講師が多くの学術活動を支えています。
博物館の完成と現在の姿
そしてついに1964年、チャプルテペック公園内に7万平方メートルの規模を誇る現在の国立人類学博物館が完成。
展示物は、7700点以上の考古学資料と、5700点以上の民族資料に及び、アステカ、マヤ、オルメカ、テオティワカンなど、メソアメリカ文明の宝庫となっています。
この博物館は、メキシコの歴史と多様な文化を象徴する場所として、世界中から訪れる人々に深い感動を与え続けています。るメソアメリカ文明の遺産を保護保管し、メキシコという国の象徴の一つともいえる施設となっています。
【博物館×遺跡】立体的に、より深く楽しむ考古学ツアー
このツアーは、メキシコ国立人類学博物館の見学と、関連する遺跡の訪問を組み合わせた特別プランです。展示品だけでは伝わりにくい古代文明の全体像を、実際の土地を訪れることで立体的に理解していただけるよう構成されています。
なぜ「博物館だけ」では分かりにくいのか?
博物館は一般的に、展示が整理され説明も豊富なため、わかりやすいと考えられがちです。
しかし、考古学博物館の場合は事情が異なります。遺物は一つ一つが文化や時代を背景にしており、博物館内でその“文脈”が断絶してしまうことがあるのです。
結果として、「見たことはあるけど、どう理解すればいいのか分からない」という印象になってしまう方も多くいらっしゃいます。
メソアメリカ文明の魅力と複雑さ
国立人類学博物館が扱うのは、スペイン人到来以前の「メソアメリカ文明」。
アステカ(メシカ)、マヤ、テオティワカン、オルメカなど、言語・習慣・信仰が異なる複数の文化(いわば小国の連合体)が共存していた地域です。
それぞれ独自性を持ちながらも、宇宙観・建築様式・宗教観念といった共通項が存在し、それらを土台にして政治・経済・文化がつながりあい、巨大な文明圏が築かれていました。
つまり、メソアメリカを理解するには、各文明の要素を“つながり”の中で捉えることが不可欠なのです。
ツアーでできること:つながりを体感する旅
本ツアーでは、お客様の旅程や滞在地域に応じて、展示品と関係のある遺跡を訪れた後、場合によっては前に博物館を見学いただく構成となっています。
たとえば、テオティワカン遺跡を見た後に対応する展示エリアへ。あるいは、マヤの神殿を見学してからその信仰体系を紹介する展示を観るといった流れです。
このように、現地の空気・スケール感を体感したうえで博物館を訪れることで、展示品一つ一つが“意味ある物語”として浮かび上がってきます。
展示を単なる「展示品」としてではなく、「つながった歴史」として感じていただける――それが、当ツアー最大の魅力です。
ツアールート例
一例ですのでお客様の旅行時間やご興味によって自在に調整可能です。
可能な限り時系列を保ちルートを組みますが、ロジスティクス上の都合で必ず年代順になるとは限りません。
メキシコシティ&アルティプラノ(メキシコ中央部)
街歩きやグルメ観光もおすすめです。遺跡巡りとあわせてお楽しみください!
メキシコ中央部一帯 4日間 |
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1日目 |
トラティルコ |
クィクィルコ |
テオティワカン |
2日目 |
トゥラ |
カカストラ/ソチテカトゥル |
チョルーラ |
3日目 |
チャルカツィンゴ |
ソチカルコ |
4日目 |
トラテロルコ |
テノチティトラン |
国立人類学博物館 |
メキシコシティと周辺 3日間 |
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1日目 |
クィクィルコ |
テオティワカン |
トゥラ |
2日目 |
ソチカルコ |
チャルカツィンゴ |
チョルーラ |
3日目 |
トラテロルコ |
テノチティトラン |
国立人類学博物館 |
メキシコシティ 1日 |
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トラティルコ |
クィクィルコ |
トラテロルコ |
テノチティトラン |
国立人類学博物館 |
オアハカ&アルティプラノ
下記の旅程は遺跡のみ入れていますが、他のアクティビティも挟むことが可能です。オアハカの場合、お料理教室やラグ作り、ハイキングができます。遺跡巡りとあわせてどうぞ。
サポテカ➡アルティプラノ 4日間 |
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1日目 |
オアハカピックアップ |
サン・ホセ・エル・モゴテ |
モンテアルバン |
アツォンパ |
サーチラ |
2日目 |
先史時代の洞窟遺跡 |
ミトラ |
ヤグル |
ダインス |
3日目 |
メキシコシティへ方面へ |
カントナ |
チョルーラ |
プエブラ市 |
4日目 |
カカストラ/ソチテカトゥル |
テノチティトラン |
国立人類学博物館 |
アルティプラノ➡サポテカ 3日間 |
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1日目 |
メキシコシティ発 |
カカストラ/ソチテカトゥル |
チョルーラ |
オアハカ市 |
2日目 |
サン・ホセ・エル・モゴテ |
モンテアルバン |
洞窟遺跡 |
3日目 |
オアハカ発 |
テノチティトラン |
国立人類学博物館 |
メシカ➡サポテカ 2日間 |
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1日目 |
テノチティトラン |
国立人類学博物館 |
オアハカ市 |
2日目 |
モンテアルバン |
洞窟遺跡 |
ミトラ/ヤグル |
オアハカでDropoff |
トトナカ➡オルメカ➡マヤ 7日間 |
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1日目 |
メキシコシティ発 |
テオティワカン |
エル・タヒン |
2日目 |
トトナカの遺跡 |
ベラクルス |
3日目 |
オルメカの遺跡 |
4日目 |
オルメカの博物館 |
パレンケ |
5日目 |
ヤシュチラン |
ボナンパク |
6日目 |
カラクムル一帯のマヤ遺跡 |
7日目 |
カラクムル |
リオベクなど |
チェトマル市でDropoff |
メキシコシティ➡マヤ縦断 8日間 |
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1日目 |
クィクィルコ |
テオティワカン |
テノチティトラン |
国立人類学博物館 |
2日目 |
タバスコへ空路で |
オルメカ一ヵ所 |
パレンケ |
3日目 |
ヤシュチラン遺跡 |
ボナンパク |
4日目 |
カラクムル一帯 |
5日目 |
カラクムル |
リオベク |
6日目 |
エツナ |
オチョブ |
7日目 |
ウシュマル |
サジル |
他プーク圏の遺跡 |
8日目 |
チチェンイッツァ |
バランク など |
カンクンまたはメリダでDropoff |
アルティプラノ➡オアハカ➡マヤ 5日間 |
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1日目 |
国立人類学博物館 |
テノチティトラン |
ソチカルコ |
2日目 |
チャルカツィンゴ |
チョルーラ |
3日目 |
モンテアルバン |
洞窟遺跡 |
ミトラ |
4日目 |
オルメカ |
オルメカ博物館 |
5日目 |
パレンケ |
タバスコ空港でドロップオフ |
次の遺跡ツアーにも役立ちます
メキシコの国土は日本の約5倍。その広大な大地には、確認されているだけで3万以上、公開されているものだけでも約200の遺跡が存在します。とくに南部を中心に、壮大なスケールと多様性を持った古代遺跡が点在しており、一度の旅でそのすべてを巡るのは現実的ではありません。
しかし、それがメキシコという国の深さであり、魅力でもあります。
メキシコ文化の「層」を旅する
現在のメキシコ文化は、ひとつの文明から生まれたものではありません。
メソアメリカ文明という多文化・多言語・多信仰が共存していた古代世界の上に、16世紀以降のスペイン文化が重なり合い、融合と断絶を繰り返しながら形作られてきました。
この多層的な歴史こそが、メキシコの他民族性の根幹であり、同時にその豊かさと個性の源です。
遺跡の価値は「知名度」ではなく「つながり」
限られた旅の日数のなかで、どの遺跡を訪れるかを選ぶのは簡単ではありません。
ですが、私はこう考えています。
「すべての遺跡を回る必要はない。大切なのは、その場で何を感じるか」
たとえ有名でなくとも、ある遺跡で見たものが、次に訪れた場所とつながりを持ち始めたとき、旅は単なる観光ではなく、文明の本質を感じる時間に変わります。
そしてその“つながり”こそが、メソアメリカ文明の真髄であり、今のメキシコの礎でもあるのです。
遺跡は「難しいもの」ではありません
「遺跡はちょっと難しそう…」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、遺跡は決して特別な知識を持つ人のためだけの場所ではありません。
現代のメキシコ文化とつなげて見ることで、今のメキシコをより深く知ることができるのです。
たとえば「食文化」。トウモロコシやカカオ、チアシードなど、今では当たり前に見かける食材も、どこで・どのように栽培され始めたのかを辿ると、数千年の歴史が浮かび上がります。
あるいは「民芸品」。その土地の素材や文様、色づかいの背景には、地域ごとの宗教や宇宙観、自然との関係性が息づいています。
何度訪れても新しい発見がある国
一度の旅でメキシコを理解するのは難しいかもしれません。
だからこそ、ぜひ2度、3度と訪れてみてください。
そのたびに違った地域を巡り、違った文化に出会うことで、メキシコという国がどれほど奥深く、魅力に満ちているかを実感していただけるはずです。
写真ギャラリー








こんな方々におススメです!
- 遺跡・歴史が好きな方
- 「メキシコの素顔」を感じたい方
- 女子旅
- ご高齢の方や御身体に不自由がある方でメキシコを存分に楽しみたい方
もちろん、上記の方々以外の方でも大歓迎です!