メキシコ在住15年目、
「メキシコの素顔を世界に!」
をモットーに、
メキシコ旅行の政府公認ツアーガイド兼ドライバーをしています岩﨑コウです。
今日もメキシコから書いています~
ボチョ。
日本では
ビートルで知られている、
独フォルクスワーゲン社の丸っこい小さい車です。
☝☝☝これです
ビートルって英語でカブトムシやクワガタなどの甲虫の総称ですが、
スペイン語ではエスカラバホ(escarabajo)といいます。
ボチョはその通称です。
ニックネーム。
なんでビートルが、
メキシコでボチョ(Vocho)と呼ばれているのかは
最後の方に書きますネ~。(笑)
既にご存知の方も多いと思いますが、
この車は、
第二次世界大戦に入る前の1934年に、
あの
高級車ポルシェの創業者フェルディナント・ポルシェと、
ナチ党の独裁者ヒトラーの肝いりで始まった、
ドイツの国民車国家プロジェクトで造られた車なんです。
そのコンセプトは、
“安全に安く家族を輸送する”
でした。
これを設計したのが上述のポルシェ。
彼は1931年に自身の工場を開け、
彼の夢でもあった大衆車の設計を始めますが失敗に終わります。
これが原因で資金難に陥るのですが、
1934年、
そこに手を差し伸べたのがヒトラーで、
彼の国民車構想に向けタッグを組みことになったのです。
「ビートル」はナチ党の政権運営上のキーファクターであり、
ドイツ国民の大半に行き渡せることが目的でした。
ナチ党の政治宣伝上の
象徴的な車にしたかったのです。
だから当時としては
最高の性能を誇る、
空冷1Lエンジンで、
リッター14.28キロ走り、
且つ軽く時速100キロに達するためのパワーも兼ね備える必要がありました。
その後1939年にドイツがポーランドに侵略し、
第2次大戦が勃発し、
この車に乗る事ができたのは一部のナチ党員だけ。
結局ナチ党が目論んだ“国民車”構想は不発に終わったのでした。
大戦後全世界に輸出され、
西ドイツの外貨獲得と戦後の復興に貢献し、
1974年に、
新型車Golfの投入を機に、
ビートルはドイツでは生産を終えますが、
メキシコとブラジルでは生産が継続されました。
朝鮮戦争終戦の翌年、
1954年に
メキシコで最初のワーゲンの代理店が開き、
ビートルの輸入販売が始まります。
“安くて壊れない”が好評で、
元祖メキシコ大衆車としての定位置をゆるぎないものにしていきます。
それもそのはず、
当時の車は大きく高級で大量のガソリンを消費するものであり、
とても庶民が日常的に使用できるものではなかったんですね。
東京五輪の年1964年に、
メキシコでの生産が始まります。
最初はメキシコシティ北西部少し先に工場を構えたのですが、
その後今日工場がある
プエブラ市に移転します。
その後2003年に生産が完全に終了するまでの68年に渡って、
計2152万9464台が世界で生産されました。
これは単一の車種の生産台数としては、
現在も世界最多なのです。(驚)
最終バージョンは2999台製造され、
84,000ペソ(現在の為替で40万円ぐらい)で販売され、
最後の一台は独本社に展示されています。
このビートル、
メキシコではボチョ(Vocho)
と呼ばれているんです、
と冒頭に書きました。
僕がメキシコに来た2006年当時は、
まだボチョが沢山走っていました。
特にタクシー。
メキシコシティのタクシーと言えば、
緑のボチョでした。
☝☝☝まさにコレ
僕の記憶が正しければ、
2012年頃にボチョタクシーがなくなりました。
ちょうどこの年に政権も変わり、
イメージを刷新したかったのでしょう。
一方で、
今でもボチョが大活躍している街があるんです。
タスコです。
“銀の街”としてガイドブックにも紹介されていますね。
☝☝☝こんな風に狭い急勾配の道を縦横無尽に走ります
それでなんで
Vochoなのかと言うと、
実は
フランス語の人を軽蔑する言葉が語源なんです。
大戦中、
フランス人は凶暴な
ドイツ人をBochesと呼んでいました。
意味はドンキー、ロバです。
英語でドンキーと言うと間抜けとかおバカという意味です。
(べつにロバはおバカだと思いませんが、、、苦笑)
Bochenie、
Bocherie
などもドイツ人を軽蔑する言葉として使われました。
フランスはアメリカの同盟国で、
戦後Bocheがアメリカ本国に持ち帰られ、
その後メキシコにも伝わります。
メキシコでは正確な由来は知らずとも、
ドイツ人と関係しているという事は知られていました。
“懐かしがった”ドイツ人が、
Bocheの
BをVolkswagenの
Vに替えて、
Vocho
と名付けたのです。
☝☝☝ビーズで埋め尽くされたボチョ
メキシコの自動車社会で一世を風靡し、
メキシコシティの固定観念とも化したボチョ。
その根っこはヒトラーに行きつきます、
というお話しでした。
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