アメリカ大陸で初めて人類の定住が始まった場所・その3
メキシコ在住15年目、
「メキシコの素顔を世界に!」
をモットーに、
メキシコ公認ツアーガイド兼ドライバーの岩﨑コウです。
アメリカ大陸で初めて人類の定住が始まった場所・その3
テワカン最終回です。
その1、その2はこちら。
【その1】キオテ通信 【その2】キオテ通信
その1、その2では文化的な側面を書きました。
このエリアの世界複合遺産の
自然関連はというと、、、
一言で言えば、
145,255ヘクタール(日光市と同じぐらい)のエリアに生息する
「アメリカ大陸で最も生物多様性がある場所」。
どれぐらい「多様」なのかというと、、、
全世界に生息する植物の「~科」という分類に置いて、
その内の70%がこのエリアに生息するのです。
生物学の分には、
細かく分けると7つ
「界・門・網・目・科・属・種」
に分けられて、
「~科」というのは下から3番目の分類です。
英語ではファミリーと言います。
例えば僕が好きなシイタケでしたら、(苦笑)
「キンメジ科、シイタケ属、シイタケ種」
という具合で、
この「キンメジ科」という部分の分類において、
全世界の植物の70%がこのテワカン-クィカトゥラン渓谷一帯にある、
ということです。
さらに、
メキシコには約3万種の維管束植物が登録されていますが、
その内10%の約3000種がこのエリアに生息し、
更にその10%の300種がこの地域固有の植物です。
ココにしか生息していない、
ということですね。
“サボテン”に関して言えば、
28属、86種類がこのエリアに生息し、
内21属はこの地域特有のものなんです。
植物だけでなく、
哺乳類は134種、
内2種はこの地域固有です。
鳥類では、
メキシコで確認されている353種の内141種がこのエリアに生息します。
アグィラ・レアル(イヌワシ)や、
メキシコではグァカマジャ・ベルデと呼ばれる
ミドリコンゴウインコ、
ジャガーやピューマなどなど、
絶滅危惧種リストに入る動物が38種生息しています。
あとはハチドリ。
ハチドリはスペイン語で「コリブリ」と呼ばれているんですが、
この鳥が、
幾つかのサボテンの授粉を担っているんです。
そのような、
世界にも類を見ない植物の多様性が存在するテワカン-クィカトゥラン渓谷。
1998年から保護対象区域に、
2012年にはユネスコの自然保護区域にしてさていました。
世界遺産に指定されたのは2018年で、
メキシコにある36 の遺産の内、
最も最近の登録のものの一つです。
テワカン(Tehuacan)とは、
ナワトル語で「神の場所」。
クィカトゥラン(Cuicatlan)は「歌う大地」
という意味。
1万2千年前にこの乾燥した大地を
敢えて「定住」の場所として選んだとき、
どんな想いだったのでしょうねぇ。
「想い」など無かったかもしれません。
ただ「生きるため」に、
多様な「食物」がたまたま周辺にあったからなのかもしれません。
そしてトウモロコシやアマランサス、インゲン豆や唐辛子、カボチャ、トマトといった作物は、
この地で初めて人間による「栽培」が始まり、
今や故郷の枠を超えて世界中で、
ウン千年という年月が経った現代の食卓を彩り、
私達人間の栄養源として不可欠な作物となっています。
今日、
皆さんがこの地で想う事があるとすれば、
どんな想いでしょう。
3部の長編、
ご精読ありがとうございました~
#MexicoCentralTours
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