カボチャの話。(ちょっと長くなります、、、)

メキシコ在住15年目、

「メキシコの素顔を世界に!

をモットーに、

プロのメキシコ旅行ガイド兼ドライバーをしています岩﨑コウです。

今日もメキシコから書いています~

☝☝☝メキシコで栽培されている5つの種類のカボチャのひとつチラカジョテ(Chilacayote)。
それを甘露煮したスイーツです。

 

スペイン語でカボチャは一般的にカラバサ(Calabaza)と言います。

今日世界には800種類のカラバサがあり、

内39種が食用に使われます。

ウリ科の作物なので、

メロンやスイカ、キュウリ、冬瓜、ヘチマなどとも親戚になるんです。

 

メキシコは世界で最も多くカラバサを生産する国で、

その生産量は年間56万トン。

カボチャをよく食べる日本はといいますと、

メキシコの半分以下の25万5千トンで世界4位なんです。

 

日本でいういわゆるカボチャの品種は、

スペイン語でCalabaza Kabosha(cha)といって、

日本へも輸出されていますね。

 

メキシコで最も重要だと言われている食材の代表格はトウモロコシですが、

実は最も栽培の歴史が長いのはカラバサ(カボチャ)なんです。

 

そして、

現在世界で食されている大半のカボチャは、

メソアメリカ(現在メキシコがある地域)で栽培されていた品種Cucurbitaに起源を持つんです。

 

その年月、

考古学的に証拠があるもので8300年から

1万年前(紀元前6000-8000年)のものです。

 

つまり、

人類のカボチャとの付き合いは、

メソアメリカ(現メキシコ)から始まったのです。

 

現在メキシコでは5種のカラバサが栽培されています。

ククルビタ(Cucurbita)という品種なのですが、

特徴は実が大きく、

種が多く取れることです。

この種(たね)をメキシコではぺピタ(Pepita)というのですが、

これが人々の生活を支えたんです。

 

このククルビタ種は全部で11種がアメリカ大陸原産で、

内5種類が今日メキシコで栽培されているんです。

 

ぺピタ(たね)はタンパク質が豊富で、

そして何よりも保存性に優れていました。

☝☝☝ぺピタ(カボチャの種)

☝☝☝ぺピタの殻を取った状態。コレを擂ったりそのまま食べたりします。
僕は今これをムシャムシャ食べながらこれを書いています(笑)

 

当時はまだ陶器などの保管用の入れ物が無かった時代ですので、

保存性があるものは重宝したわけです。

そういった意味では唐辛子も保存がきく作物でした。

 

よってカラバサは、

神聖な作物として、

メソアメリカ最古の文化であるオルメカの影響を受けた都市跡でも、

彫刻に描かれています。

 

メソアメリカで最も初期の段階で人間による栽培が始まったカラバサ(カボチャ)。

でもメキシコでは、

日本で食べるような成熟した大きなカラバサはあまり食べないんです。

 

最もよく食べられるのは、

未熟のカラバサで、

メキシコではカラバシィタ(Calabacita)と呼ばれています。

日本ではズッキーニとして知られていると思います。

☝☝☝カラバスィタ(Calabacita)・ズッキーニ
この先端に黄色い花が咲きます。

☝☝☝カラバスィタ(ズッキーニ)の中

その名の通り、

未熟で小さいんです。

 

メキシコには5品種のカラバサがあると書きましたが、

最もカラバシィタ(ズッキーニ)として食べられるのは、

Cucurbita Pepoという種類が主なんです。

よって生産量もこの種が一番多いんです。

そしてこの品種は、

スペイン人がメソアメリカから最初にヨーロッパに持ち出し、

スペイン本国で最初に栽培を始めヨーロッパに広まった品種でもあるんです。

 

そしてカラバサの

スペイン語ではフロール・デ・カラバサ(Flor de calabaza)といいます。

☝☝☝カラバサ(カボチャ)の花(Flor de calabaza)

これは僕の好物でもあります。

キレイで鮮やかな黄色の花は、

特に味という味はしないのですが、

僕は朝ごはんにケサディジャにしてよく食べます。

☝☝☝カボチャの花(フロール・デ・カラバサ)のケサディジャ(Quesadilla)

 

品種にもよりますが、

一つの蔓に、

174~222の花が咲きます。

カラバサの花は、

一般的に花の香が薄く、

調理もしやすいという点で重宝されいます。

5月下旬から6月上旬に掛けてと、

8月下旬から10月初旬にかけて花を咲かせます。

ビタミンとアミノ酸が豊富ですので、

体にもいいですね。

 

そしてメキシコ料理には欠かす事ができない、

カラバサの種(たね)。

ぺピタ(Pepita)と言います。

ぺピタそのものは薄いですが硬い殻が付いているので、

殻を剥きます。中に緑がかった実があるんです。

これを胡麻などと一緒に挽いたものをピピアン(Pipian)

と言います。

これを使ってソースにして、

チキンなどに掛けて食べる料理があるのですが、

これを文字通りピピアンと言います。

モレにも欠かせない食材です。

☝☝☝モレ用にフライパンで煎ったぺピタを胡麻と一緒に擂っています

☝☝☝擂った後

☝☝☝ピピアン。黒いものは豆です。

 

どのカラバサも種はあるのですが、

一番多くて大きいぺピタ(種)は

Cucurbita Pipianaという品種から取れます。

これはメキシコが原産という事が確認されています。

紀元前3085年の種が、

タマウリマス州で見つかっています。

ぺピタ(種)は44%がタンパク質で、

貴重なたんぱく源でもあったんですね。

 

あと、

ぺピタっておつまみとしてもよく食べられます。

(今僕が食べているもの。冒頭の写真)

殻ごと塩と一緒に煎ったものを、

落花生と同じように、

手で殻を剥いて食べるんです。

または、殻を剥いてあるものも売っています。

 

成熟した実はと言いますと、

実はメキシコ料理では不思議と殆ど見かけないんです!

カボチャの煮物とか天ぷらなんて最高にオイシイのに、、、

勿体ないですよね~、と思いつつも、

全くゼロではないんです。

 

殆ど唯一と言っても良い例は、

お菓子(スイーツ)です。

甘露煮です。

メキシコではフルータス・クリスタリサダス

(Frutas cristalizadas)

といいます。

☝☝☝ノパル(サボテン)の甘露煮

☝☝☝カラバサ(カボチャ)の甘露煮

 

成熟したカラバサの収穫は毎年10~11月に掛けてです。

 

サトウキビはスペイン人がメソアメリカに持ち込みました。

元々メソアメリカではカラバサやフルーツの甘露煮は存在していなく、

スペイン人によって持ち込まれた砂糖によって発達しました。

市場や露天に行くと、

いかにも甘そうなフルーツやカボチャ、

サツマイモの甘露煮が売られているのをよく目にします。

 

日本でも金柑やイチジク、サツマイモ、若桃などの甘露煮がありますよね。

メキシコでは、

カラバサ(カボチャ)、

カラバサの一種チラカジョテ(Chilacayote)、

サツマイモ、

イチジク、

リンゴ、

トゥナ(サボテンの実)、

パイナップル、

オレンジ、

ライム、

バナナ などなど、

様々なフルーツの甘露煮が作られています。

 

フルータス・クリスタリサダスの話はまた別の日にしますね~。

 

花、実、種と、

メキシコの食卓でカラバサは、

昔から現代まで欠かす事ができない作物なんです。

 

以上がカラバサ(Calabaza)ですが、

カラバソ(Calabazo)と呼ばれるものもあるんです。

 

これはCucurbita種ではなく、

別の品種ですが、

いわゆるヒョウタンですね。

ヒカラ(Jicara)といって、

ヒョウタンでできたや、

計量用の道具として使われます。

メシカ帝国(良く言われるアステカ)期では年貢用の金や顔料を計るのに使われました。

日本で升がお米の計量に使われていたのと同じような感覚ですね。

 

このヒョウタンは種類によっては長細いものがあるのですが、

これは有名なプルケというお酒を造る時に、

マゲイ(テキーラなどの原料)の中に貯まる樹液(アグアミエル)

を吸い出すための道具(アココテ)として使われました(ています)。

 

こんなふうに、

カラバサ(カボチャ)は、

メソアメリカ(現メキシコ)で最も古くから栽培されている作物であり、

今から何千年、何万年も前からメソアメリカに生息し、

時を経て現代メキシコの人々の生活に欠かす事のできない作物となっているんです。