意外と知られていない、メキシコの旧暦の年末年始。

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メソアメリカの旧暦で「最後の一カ月」。

 

👆2月2日はタマルとアトレを食べます。

 

昨日の続きです。

まだの方はこちらをどうぞ👇

メキシコの旧正月メキシコ キオテ通信

 

秩序の中の無秩序の期間

で、

現代の1月にあたる時期というのは、

そのメシカの暦トナルポウァリの最後の月になります。

現代の12月のような時期ですね。

その最後の一カ月(20日間)をイスカリ(Izcalli)と呼んでいました。

Decemberではなく。

 

スペイン人修道士サグンの史書によると、

厳密にこのイスカリ月というのは、

現代の2月1日~20日にあたるとされています。

 

そして、イスカリ月が終わると、

最後に「+5日」が付きます。

 

この+5日というのは、

同じくナワトル語で、ネモンテミ(Nem on temi)と呼ばれていました。

現在の2月21日~25日にあたります。

 

その意味は・・・

 

余った、必要のない。

 

マヤ語ではuyeb。

 

現にこの「+5日間」には、

神は存在しないと考えられており、

その証拠に「生贄」という、

「神に捧げる儀式」というのも行われていなかったと、

スペイン人修道士の史書に記録されています。

 

西暦というのは、

2021年が「終わり」、

2022年が「始まる」という直線で、

2022年は二度と2021年に戻ることはありません。

一方、

当時メソアメリカの死生観は「死⇒生⇒死⇒生・・・」です。

 

だから生贄、

だから死者の日であり、

だからセンパスチル(マリーゴールド)なんですね。

 

イスカリ月=死⇒アタルカウァジョ月=生に戻る=始まる⇒戻る⇒始まる、

つまり仏教の輪廻転生のようなもの。

 

でもその死⇒生のつなぎ目では、

人々はとても恐怖に怯え、

不安に苛まれたそうです。

「ちゃんと新年始まるんですかい」と。

「いつも頼りにしていた神様もいなくなっちゃいました」と。

 

つまり、

現代に例えるならば、

12月31日が終わり即秩序ある新年とはならずに、

1月1日~5日まで大統領も法律もなくなっちゃいました、

という感覚でしょうか。(苦笑)

まさに映画The Purgeのような無法状態?(苦笑)

 

でもですね、

ココが興味深いところでして、

一応秩序らしいものがある現代に生きる僕らからすると、

360日は秩序が保たれ、最後の5日が無秩序って、

理解不能じゃないですか。

でも当時の人々は、

敢えてこの5日間の「無秩序の期間」というのを作った。

現代人なら、

1月は31日まで、

でも2月は28日まで、

3月は31日まで、

というように、

一カ月の日数を「調整」し、

毎年の終わりが12月31日で終わるように調整しながら、

その秩序を保とうとします。

でもメソアメリカの人々はそれを「敢えて」せずに、

逆に秩序と無秩序の時間を、

現実世界に「一緒に」置いたわけです。

これもメソアメリカを考えるときに忘れることができないデュアリティ(二重性)の一つ。

 

天空と地下、

生と死は「善と悪」ではなくて、

「性質が異なる同じ世界」という考え方。

 

これ、ちょっと考えてみてください。(笑)

 

メキシコの「旧正月」

そして「新年」の始まりであり、

新たな「生」が始まる月、

現代の1月、

元旦に相当するアトゥラカウァロ月が始まるのが、

西暦でいう2月26日とされています。

 

というわけで、

2月25日というのは、

昔(500年以上前)は大晦日であり、

神が存在しない空虚で無秩序な期間の最終日、

2月26日は元旦だったんですね。(祝)

 

メキシコの旧暦の元旦にすること

で、

現代のメキシコの2月2日というのは、

とうとう「クリスマス」の一連の行事が終わる日、

カンデラリア祭です。

 

もちろん、

カンデラリア祭というのは、

カトリック教のヨーロッパ人が持ち込んだ習慣で、

キリストの誕生を教会に知らせるという日。

これをもって、

「キリストさんの誕生」に関わる一連の習慣、

クリスマスは終わりを告げるのです。

カンデラリア祭で有名なのは、

ベラクルス州のトラコタルパンという町。

👇ここ

 

一連の習慣とは、

ヘロデ王から逃げたポサダという9日間、

キリストさんが生まれたクリスマス、

ヘロデ王がキリストを探すために同世代の多くの子供を虐殺したSantos Inocentesという12月28日、

赤子のキリストに贈り物を届けたレジェス・マゴス(東方の3賢者)、

そして教会への報告会カンデラリア(今日)。

 

やっと、ゴールです。(笑)

 

「で」、が続くんですが、(苦笑)

このカンデラリアの日と言えば、

ここメキシコでは「タマル」というメキシコ料理をですね、

皆で食べるという習慣があります。

👆冒頭の写真

 

これ、

なんでカンデラリアの日にタマルなのかというのには、

諸説あってその起源については僕の方でハッキリさせることができていません。

大学の考古学の先生に聞いても、

カンデラリアとタマルを食す習慣のリンクについて、

ハッキリした返答を得られていません。

でも世の中には僕の説というのがあってですね、(苦笑)

それはこうです。

 

2月というのはトウモロコシなど、

人々の生活に欠かせない作物を植える農業の時期。

とりわけトウモロコシは古くはオルメカ時代から、

人々の宇宙観の「軸」として捉えられ、

現にレリーフにも描かれてきました。

👇長い石をアチャといって、トウモロコシの実を意味します。

 

トウモロコシは単なる食べ物だけではなく、

宇宙観の「軸」の一つとして重要視されてきた作物なんです。

メシカ時代(1325年~1521年)の時点で約3000年の歴史です。

しかも、

タマルというのは数多くあるメキシコ料理の中でも、

最もその歴史が古い料理。

👇最古のタマルが描かれた壁画。紀元前100年ごろのもの。

丸いものがタマルです。

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(出典:Arqueologia mexicana)

日本であまねく知られるトルティーヤ(トルティジャ)って、

その歴史って意外と浅い。

古くても600年以降です。

モレもおいしいですがこれはメシカ時代が原点。

でもタマルは遅くても紀元前100年頃には、

料理ないしは儀式で重要な食べ物として存在していました。

 

そんなタマル、

メシカ時代の人々は、

現代の西暦の12月にあたる、

一年の最後の一カ月、

イスカリ月に、

チャルチウタマリ(Chalchiuhtamalli)という特別なタマルを作って火の神様に捧げていたのでした。

 

このような経緯から、

このメシカの暦の年末年始にあたるこの時期というのは、

トウモロコシ、

とりわけタマルは非常に重要な料理として扱われていたことは、

想像に難しくありません。

 

このメシカの信仰を、

スペイン人が現地の住民をカトリックに改宗させるための手段として、

この年末年始の特別な時期を「カンデラリア祭」に置き換え、

更には、

1月6日のレジェス・マゴスのところでも書きました、

パンを切ってキリストさんの人形が「当たってしまった」人が、

お客さんを招待して盛大にパーティーをしなければならなかったという、

教会の習慣でも嫌がられていた“罰ゲーム”的な習慣を、

「人形が出た人は2月2日に皆にタマルをおごる」という、

今日の“罰ゲーム”に繋がったと僕は「推測」します。(苦笑)

 

ポイントは、

タコスでもポソレでもモレでもチラキレスでもミシオテでもなくて、

「タマル」じゃないとダメなんです。(笑)

 

これについて意外と資料が少ないのが不思議なんですが、

点と点を繋げていくとですね、

このような結論に至っても不思議じゃないんです。(笑)

 

点と点を繋げて「良いお年」を(笑)

はい、てなわけでして、

旧正月の話から

メシカ(アステカ)、マヤの暦、

世界滅亡論を通り抜け、

クリスマスに逆戻りしつつも、

ちゃんとメキシコ料理のタマルを食べてお開きになりますよ~、

というお話でした。

 

各「点」がよくわからないと、

何を言っているのかチンプンカンプンだと思いますが、

ご心配なく。

メキシコで分かり易く説明します~(笑)

 

あ、

あと2月2日と言えば、

二十四節気ではもう「立春」。

春ですね~。

2022年こそ春よ来い!ですね。(笑)

 

ではまた~

 

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