ヤシュチラン遺跡
マヤの遺跡とチアパスの大自然が織りなすメキシコの素顔

ラカンドンの魅力

メキシコ南部の地図

遺跡からジャングル、現地の人々の生活まで、メキシコの知られざる一面を感じられる場所、これがラカンドンです。

パレンケやヤシュチランが位置する一帯は、メキシコ南東部の「ラカンドン原生林(Selva Lacandona)」と呼ばれ、国内でも最も多様な生態系を誇る自然エリアのひとつです。
この熱帯雨林は、豊かな植生と希少な野生動物が生息することで知られ、自然好き・歴史好きのどちらにもおすすめのエリアです。

この地域を旅するなら、まずはマヤを代表する遺跡パレンケ(Palenque)を訪れたいところ。ジャングルの中に佇む神秘的なピラミッドや宮殿は、600年代の繁栄を今に伝えます。さらに、ウスマシンタ川沿いのヤシュチラン(Yaxchilán)や壁画で有名なボナンパク(Bonampak)など、マヤ文化の奥深さを感じられる遺跡が点在しています。

そして、古代メソアメリカの歴史にさらに深く触れたい方には、「オルメカ文明」の地にも足を伸ばす旅をおすすめします。
オルメカ文明は、マヤやアステカよりも古く、紀元前1800年ごろから栄えたメソアメリカ最初の高度文明です。巨大な石像や宗教的象徴(蛇や洞窟など)、階層社会の痕跡など、都市型社会の原型ともいえる要素がこの時代に整いました。

このルートは、定番のメキシコ旅行とは一味違い、「自然」「探検」「メキシコの古代文明」の3つの魅力が詰まった知的で奥深い旅になります。人とは違うメキシコを旅したい方、エコツーリズムや文化遺産に興味のある方にとって、まさに理想的なルートです。

マヤのジャングル地帯ラカンドンへの旅

マヤのラカンドンのジャングル
ラカンドンのジャングル

「ラカンドン(Lacandón)」という言葉の語源は、現在では消滅したマヤ系の言語「チョルティ(Chʼoltiʼ)」の「Lacan-tún」に由来し、その意味は「岩山」あるいは「硬い岩」とされています。

この言葉を名付けたのは、マヤ時代にミラマル湖(Laguna Miramar)近くに集落を形成したユカタン半島出身の部族の一部。彼らがラカンドン原生林と呼ばれる地に名前を残したのです。

メキシコの言語文化、とりわけマヤ系言語は非常に複雑ですが、マヤ文明や現地文化を深く理解する上で不可欠な知識でもあります。少しでも知識があると、遺跡や自然風景の見え方がまったく変わってきます。現地ではガイドとして、こうした背景もわかりやすくご説明しますので、ぜひ楽しみにしてください。

今も日常で使われる多様なマヤ系言語

ラカンドンの人々
ラカンドンの一家と

ラカンドン原生林北部、たとえばパレンケやヤシュチラン、ボナンパック遺跡一帯を歩くだけでも、驚くほど多様なマヤ系言語が今なお話されています。

  • チョル語(Chol):パレンケ周辺で広く使用
  • マヤーラカンドン語(Maya-Lacandon):ボナンパック付近の集落で話される言語
  • ツェルタル語(Tzeltal):パレスティナ村などで使用
  • その他にも、トホラバル語、ツォツィル語、チョンタル語など、多様なマヤ語族の言語が地域ごとに根付いています。

これらの言語は、単に会話の手段というだけでなく、それぞれの地域の文化の柱です。しかし残念なことに、マヤ-ラカンドン語のように消滅の危機にある言語も多く、話者数が年々減少しているのが現状です。これらはメキシコにとってかけがえのない文化遺産であり、私たち一人ひとりがその価値を理解し、守っていく必要があると感じています。

言語を知ると旅がもっと深くなる

こうした言語背景を少しでも知ってから旅をすると、遺跡や村の風景がより豊かに感じられるはずです。
パレンケ遺跡を歩くときにチョル語が聞こえてくる理由、ラカンドンの森に住む人々がどんな言葉で祈りを捧げるのか――それを知ることは、単なる観光を超えた「文化との出会い」です。

チアパス東部の旅は、自然・歴史・文化のすべてを味わえる、深く濃密な体験になることでしょう。

チアパス州東部に広がるラカンドン原生林(Selva Lacandona)

チアパスのウスマシンタ川
ウスマシンタ川が国境をなす

メキシコ国内でも最も多様な生態系を持つ自然地帯のひとつです。

現在確認されているだけでも:

  • 蝶類:114種
  • 哺乳類:345種
  • 植物:3,400種以上(うち約160種がこの森の固有種)

という驚くべき数の動植物が生息しており、この一帯だけでメキシコ全土の植生の15%を占めるともいわれています。

この原生林は、メキシコにおける絶滅危惧種の保護区としても極めて重要な役割を担っています。

たとえば:

  • タピル(バク):古代から「森の守り神」とも言われる、非常に警戒心の強い哺乳類
  • ジャガー:メソアメリカ文明の神話にも登場する、森の頂点捕食者
  • 赤グァカマヤ(コンゴウインコ):全身が鮮やかな赤・青・黄で彩られた大型の鳥で、マヤ文化でも神聖な鳥として崇められてきました

これらの希少種は、開発や密猟によって生息数が減少している中、このラカンドンやカラクムルをはじめとした森が最後の砦となっています。

ラカンドンの人々
ラカンドンの野生動物を保護する人達

多くの一般的なツアーでは、パレンケを出発して日帰りでボナンパックやヤシュチランを駆け足で巡るだけのスケジュールが組まれています。片道3時間、往復6時間以上を車で移動し、遺跡を短時間で回るため、どうしても現地の空気感や自然の魅力をゆっくり感じることができません。

日帰りではもったいない、ラカンドン原生林に泊まる特別体験

このエリアでしか味わえない「本物のジャングル体験」を存分に楽しんでいただくために、ラカンドン森林内の宿泊施設に滞在するプランをご用意しています。
携帯の電波はほとんど届かず、インターネットも通じない――そんな環境だからこそ、夜の静寂の中に響く動物たちの「生」の音に耳を傾ける時間は、現代の私たちにとってかけがえのない体験となるはずです。

ラグジュアリーではない、しかし「本当の贅沢」がここにある

宿泊施設は決して豪華ではありませんが、360度マヤの自然に包まれた空間は、どんな高級ホテルにも勝る「豊かさ」があります。

  • 電力はソーラーパネルで自家発電し、バッテリーに蓄電。
  • 水源は年間2,000〜5,000mmの降水量を誇るウスマシンタ川。
  • 温水は太陽熱利用。
  • 現在、食材の一部は敷地内で自家栽培された野菜や果物を使用し、将来的にはすべて自家生産に移行予定です。

このように、できる限り環境に負荷をかけないサステナブルな滞在が可能です。

原生林の中を歩く、静かな2時間のネイチャーツアー

ご宿泊翌日は、ラカンドン原生林の中をゆっくりと歩く約2時間のネイチャーツアーへご案内します。

  • 野鳥観察や、運が良ければジャガーやサルなど野生動物の姿にも出会えることも。
  • ジャングル内には手つかずのマヤ時代の建造物跡も残されています。
  • 地元のチョル族の人々との交流もこのツアーの大きな魅力のひとつ。彼らの暮らしや文化に触れる貴重なひとときをお楽しみください。

国境の村にも立ち寄り可能(ご希望に応じて)

ご希望のお客様には、ツアーの帰路にグアテマラ国境の小さな村に立ち寄ることも可能です。特別な観光施設があるわけではありませんが、一歩で国境をまたぐ不思議な感覚は、日本では体験できないユニークな思い出となることでしょう。

このような、“観光地を巡る”だけではない旅が、チアパスとラカンドン原生林の本当の魅力を教えてくれます。
自然と文化、人とのふれあい、そして“何もしない”贅沢を味わいに、ぜひこの地を訪れてみてください。

隣国グアテマラの町

※観光できる場所の数はお客様のご滞在時間によりますので、旅程をご相談させて下さい。お客様の時間によって臨機応変にスケジュールを組みますので、お気軽にご相談ください。

マヤの古典期を代表する遺跡群

パレンケ遺跡の全景
パレンケ遺跡

メキシコ・チアパス州の密林の中に眠るパレンケ遺跡(Palenque)は、ユネスコの世界遺産にも登録されている、マヤの中でもとりわけ美しい都市遺跡です。
この都市が最も栄えたのは、メソアメリカ史における「古典期(AD200〜900年)」の後半、600年頃〜700年頃とされています。

メソアメリカ史の時代区分とパレンケの位置づけ

メソアメリカ文明は大きく3つの時代に区分されます:

  • 先古典期(紀元前1800年頃〜AD200年頃):集落の形成と初期文明の発展
  • 古典期(AD200年〜900年頃):都市文明の隆盛と大建築の時代
  • 後古典期(AD900年〜1521年):戦乱と再編を経て、チチェン・イッツァなど新たな中心地が誕生

パレンケはクラシコ期後半に大いに繁栄した都市であり、同時代のカラクムルやティカルとともに、マヤ古典期を象徴する存在です。
その一方で、都市の発展には長い歳月がかかりました。現在のパレンケ遺跡一帯に集落ができ始めたのは紀元前150年頃。そして最初の巨大建造物が建設されたのはAD200年頃とされています。

「パレンケ」の本来の名前は?

現在は「Palenque」という名で知られるこの地も、当時は別の呼び名が存在しました。

  • ラカンハ(Lakamhá’):マヤ・ユカテコ語で「豊かな水の地」という意味。パレンケ周辺には現在確認されているだけでも9つ以上の水源があり、都市の持続的な繁栄を支えていました。
  • オトゥルン(Otulúm):この地域で話されているチョル語(Chol)に由来し、「要塞化された家」を意味します。実際に遺跡の地形を見ると、山と水に囲まれた防衛に適した地であることが分かります。

ヤシュチランの繁栄と歴史的背景

チアパス州の密林、ウスマシンタ川のほとりにひっそりと佇むヤシュチラン遺跡(Yaxchilán)は、パレンケと並ぶ古典期マヤの重要都市のひとつです。
この遺跡の最大の特徴は、陸路ではアクセスできず、ボートでしかたどり着けないという特異な立地。まさに“ジャングルの中の秘境”と呼ぶにふさわしい神秘的な空間が広がっています。

ヤシュチランの繁栄は、パレンケに最初の大建造物が築かれたAD200年頃から始まり、600年〜800年頃にかけて最盛期を迎えました。
これは、パレンケの黄金期とほぼ同時期であり、ウスマシンタ川流域の都市間で、政治・文化・軍事的な緊張と交流が活発だったことがうかがえます。

衰退と新時代への橋渡し

ボナンパク遺跡の壁画
ボナンパクの壁画

パレンケ、トニナ、カラクムルといったマヤ前期の大都市は、10世紀頃を境に衰退していきます。
しかしその終焉は、チチェン・イッツァやウシュマル(Uxmal)などが栄える後古典期への移行を意味し、マヤ文化の新たな章の幕開けでもありました。

パレンケ遺跡は、その建築技術の高さ、美しい彫刻、王朝の系譜、そしてマヤ世界における水の重要性など、数々の要素を通じて、訪れる人にマヤの本質的な魅力を伝えてくれます。
遺跡巡りに加えて、この土地が歩んだ長い歴史の背景を知ることで、旅の体験はより深みを増すことでしょう。

ラカンドン観光の広げ方──他地域と組み合わせて深掘りする旅

メソアメリカ文明の始まり、オルメカ3都市を巡るツアー

チアパスにあるマヤ前期の遺跡群からユカタンのマヤ後古典期の遺跡まで縦断するツアー

パレンケ遺跡&カラクムル一帯と併せてマヤをよく知るツアー

こんな方々におススメです!

  • ワクワク感を高めたい方
  • 「メキシコの素顔」を感じたい方
  • 「移動」の時間を「発見」の時間に変えたい方
  • 一般的なツアーでは物足りなくなった方
  • 女子旅
  • 体力が有り余っている方
  • 特別なメキシコ旅行にしたい方
  • 文化・自然が好きな方
  • 悶悶と過ごしている老若男女

もちろん、上記の方々以外の方でも大歓迎です!

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