中米諸国のからの移民と家族送金。
メキシコ在住15年目、
「メキシコの素顔を世界に!」
をモットーに、
メキシコ公認ツアーガイド兼ドライバーの岩﨑コウです。
移民。
☝☝☝映画La Jaula de Oro
数カ月前に少し書いたと思います、
メキシコの移民事情。
僕も移民の一人ではあるのですが、
ここでの移民は国外への出稼ぎ労働者です。
日本はブラジルの人達をはじめ、
フィリピンや東南アジアの人達など、
中には学生の方もいると思いますが、
多くの人達が「出稼ぎ」という形で、
日本に居住していると思います。
でも、
日本人がどこかの国に、
「出稼ぎ」という形で出向く事って、
あまり、というか無いですよね。
いわゆる発展途上国では、
国外の出稼ぎ労働者から、
毎月なり毎年なり、
母国にいる家族に送金があり、
それに頼って生活をしている人達も少なくなりません。
これが国の外貨獲得手段としてバカにならず、
GDPにもかなりのパーセンテージで“貢献”しているのです。
メキシコも多分に漏れずです。
どれぐらいかと言いますと、
メキシコのGDPは2019年は1兆2000億ドル(日本の4分の1)、
その内3%弱の340億ドル(日本円で4兆億円ぐらい)が国外からの家族送金が占めるんです。
ちなみに石油は同年6%強です。
それでも、
家族送金の受け入れ額で言えば、
メキシコは世界3位で、
(情報の中にはメキシコとフィリピンが逆転したとも)
1位はインドで9兆円ぐらい、
2位は中国で8兆円ぐらい、
4位はフィリピンで4兆円弱ぐらいです。
☝☝☝メキシコへの家族送金の額は昨年過去最高を記録しました。
今年は2.82%の見込みでしたが、パンデミックでどうなるか。
出典:El Economista
https://www.eleconomista.com.mx/sectorfinanciero/Alta-dependencia-de-remesas-en-Mexico-tema-de-preocupacion-20190923-0029.html
メキシコには約3300万世帯あると言われていますが、
その内4.8%、
160万世帯がこの家族送金に頼らざるを得ない状況というデータ(2016年)があります。
昨日「パツクアロ・前編」でご紹介しましたミチョアカン州は、
メキシコ32州の中で最も多くの外国からの家族送金を受け取る州で、
その額は3600億円弱、
州のGDPの10%にも達します。
そんな状況の中に突如として起こったコロナショック。
母国を離れている彼らの状況にも変化がないわけありません。
国外に渡った、
メキシコを含む中米諸国出身者の
59%の移民は送金を続けているそうですが、
41%の人達は送金を止めたそうです。
止めた理由は様々で、
失職や減給などで物理的に送金が出来なくなったケースや、
金融機関の閉鎖など様々です。
また、
これから外国に渡航しようと考えていた人たちも、
約60%の人達が渡航をキャンセルや延期、見直しなどを迫られました。
移民する理由は経済的な理由だけでなく、
母国の住む地域の安全性なども大きな要因になります。
近年の人種差別に端を発しているとしか思えないアメリカの実情をみると、
アメリカンドリームなんて運が良かった一部の成功者が作り上げた勝手なイメージ?
“専門業者”に大金を支払ってやっとこアメリカに渡る事ができても、
メキシコ出身移民の失業率は男性3.6%、
女性にいたっては5.5%程(2018年時点)、
このパンデミックでその数値も悪化し、
上記の送金を止めざるを得ない状況に繋がります。
ちなみにメキシコからアメリカに“不法入国”するために必要なおカネって
いくら掛かるかご想像つきますでしょうか?
メキシコ-アメリカの国境地帯には、
メキシコ側からアメリカ側へ“不法”に入国を助ける“専門業者”がいるんです。
メキシコでは一般的にコヨーテと呼ばれているのですが、
もちろん合法的な仕事じゃありませんヨ。
メキシコ出身者は87,000ペソ(42万円ぐらい)、
それ以外の中米出身者は11,500ドル(122万円ぐらい)。
なんとその差3倍です。
メキシコの大卒、
給料が良いとされる金融業界で
初任給が7万2千円ぐらいですから、
その半年分、
でもそんなに稼げる人はホンの僅かで、
アメリカに行かなければならないほど生活に窮する人達には超超超大金です。
メキシコ以外の国であれば尚更の事です。
もしご興味があればこちらの映画をご覧下さい。
LA JAULA DE ORO (THE GOLDEN DREAM)
https://www.amazon.co.jp/JUALA-ORO-GOLDEN-DREAM/dp/B01CJ5XCOY
ネットフリックスにもあるのかな?
メキシコの隣国グアテマラ出身の少年たちが、
メキシコを通りアメリカに向かう様子を描いています。
この2020年8月27日(日本は28日)、
海を挟んだ日本の反対側には、
文字通り“命がけ”で、
この瞬間を必死に生きる人たちがいます。
僕は幸運な環境に生まれました。
学校も行かせて貰いました。
自由気ままに旅行もし、
好きでメキシコに来て、
今日も食べ物や寝る場所に困ることなく生きることが出来ています。
これは全部“運”です。
自分の頭に思いつくような“これまで頑張った事”なんて、
所詮彼らの境遇を考えれば何でもありません。
もし彼の生活環境に、
自分と同じ人間として生まれていたら、
果たして生き延びることができるかと考えると、
その自信はありません。
本当の意味で“良い世の中”というのは、
テクノロジーの発達だけでなく、
彼らのような境遇が改善されない限りあり得ないという事に、
自分も含めて“恵まれている”人達は気付くべきです。
僕が今事業を通じてやっている事は、
ホントに雀の涙にも満たないものですが、
当事国でもあるメキシコでの旅行業を通じて、
このような人々の境遇に少しでも貢献できればと考えています。
#MexicoCentralTours
【キオテ通信】バックナンバーもどうぞ