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メキシコのチアパス州シナカンタン村の一家が夕食を準備している
チアパス州シナカンタン村で2011年11月

同じ人間なのに呼び名が変わる謎

メキシコに関する本や様々なメディアを見ていると、

「インディヘナ」
「インディオ」
「先住民」

という表記があります。

僕はなるべく、このような言葉を使わないようにしているんですが、これには理由があります。

インディヘナは indigena と書くのですが、これはラテン語の inde と genos が語源です。

inde は「その土地の、国の」という意味、
genos は「本来の」とか「土着の」という意味です。

“インディヘナ”は、1521年にスペイン人がメソアメリカを占領し始めた後に、当時のスペイン人ジャーナリストたちがメソアメリカの“先住民”の呼称として“発明”した言葉なのです。

もう一つの“インディオ”はコロンブスの勘違いが由来ですね。

だから少なくてもメキシコでは「インディオ」というのは根も葉もない間違った呼称ですので使わないようにお願いします。


インディオとインディヘナは別物

このように、“インディ”までは同じでも、両者は全く別の言葉なんです。

発音は同じでも意味は全く違うもの。

元々はメソアメリカに住んでいた“先住民”の総称として使われた“インディヘナ”ですが、

次第と「過去の人間」という意味合いで使われはじめ、インディヘナ=遅れた人間、劣った人間という概念が定着し始めます。

更には、19世紀にはそのような負の概念の普及が、こともあろうにオアハカ出身のポリフィリオ・ディアス“大統領”によって加速するのです。

チアパス州シタラ村2007年

このように、政治的、社会的に排他的に扱われてきた結果が、90年代のサパティスタ民族解放軍(EZLN)の武装蜂起に繋がるのです。

このサパティスタの出現は、この“インディヘナ”の概念に変化をもたらします。


メソアメリカ文明の末裔である誇り

メソアメリカの文化の末裔であることを誇りに思い、“先住民”に対する慢侮に対して立ち上がったのですね。

メキシコでは、この“インディヘナ”という呼称の使用をやめ、

ヘンテ・オリヒナリア
(gente originaria)

と呼びます。

文献を読んでいても、そのような変化に気付くことも多くなりました。

とは言っても、こういう背景を知らない人が多いので、“インディヘナ”が使われるケースがまだ多いのが現状です。

メキシコの先住民
チアパス州テネハパ村の新年の行事で2007年元旦

インディヘナとヘンテ・オリヒナリアの違い

“インディヘナ”と“ヘンテ・オリヒナリア”。
意味自体は「同じ」としても、その概念は全く違うもの。

“インディヘナ”
=「過去の人達」「遅れた人達」

“ヘンテ・オリヒナリア”
=「メソアメリカの文化に端を発する人達」

これはとても大きな違いです。

“インディヘナ”と言っても差別的な意味合いを含まない場合や、“先住民”自身も気にしない人もいます。

でも、そういった意味や背景があるという前提で、僕は敬意も込めて、

ヘンテ・オリヒナリア(先住民)
プエブロス・オリヒナリオス(先住民の村)

と呼ぶ風潮に同調しているのです。

そもそもメソアメリカ(メキシコ)には、確認されているだけでも124もの文化(言語)が存在していたのです。

それを、

“インディヘナ”
“先住民”

という抽象的な言葉で一括りにすること自体無理があります。

アジア人は、日本人だろうが韓国人だろうが中国人だろうがみんな一緒、と言っているようなものです。

“先住民”も文字通り「先に住んでいた人」ですが、彼らの生活は今でも続いています。
彼らの文化も健在です。

少なくても「過去のもの」というイメージを与える“先住民”という言葉の使用も違和感を覚えます。


普通に呼べばいいんじゃないですか

その為に僕は普通に

「地元の人」
「チアパスの人達」
「オアハカの~村の人達」

または

「マヤ文化のツォツィル語圏の人達、あるいは村」
「サポテカ文化の人達」

と文化の名前や地名で呼ぶようにしているんですね。

その方が分かりやすいし、何より彼らへの敬意も表せると思うからです。

いかがでしょう。

たかが“言葉”ですが、その背景を踏まえると慎重になるべきポイントなんです。

ついつい、“歴史の勝者”(ヨーロッパ人)によって書かれた“歴史”を、それがあたかも唯一の事実かのように捉えてしまいがちですが、

“歴史上の敗者”
つまりメキシコのケースのように、勝手に乗り込まれて虐げられた人達の側に立つと、不思議な“言葉”というのは多くあるんです。

コロンブスのアメリカ大陸“発見”然り。

このような“小さな事”を知ってご旅行されるだけでも、大分違った景色が見えると思いますよ~。

メキシコの先住民
ナワ文化とトトナカ文化が混在するプエブラ州クェッツァラン村2006年8月

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