チアパス州タパチュラ市で予想に反して大衝撃を受けました。
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チアパス州タパチュラ市で予想に反して大衝撃を受けました。
👆タパチュラ中心部
チアパスにあるメキシコの現実
チアパス州の大きな街と言えば、
州都のトゥクストラ市、
サン・クリストバル・デ・ラス・カサス市が有名ですが、
もう一つ、
メキシコの現実を知るうえで行くことをお勧めしたい街がここ、
タパチュラ市です。
タパチュラツアーをお勧めしている日系旅行会社なんてないと思いますが、
僕は敢えて旅程に組み込みたい。(笑)
タパチュラといえば、、、
ときは遡ること1897年5月10日。
当時のメキシコはポルフィリオ・ディアス政権下。
ディアス大統領といえば、
「独裁」政権を敷くものの、
1821年の独立後から同70年代まで続いたグズグズ状態から一応脱し、
一応安定的な政権を34年ぐらいに渡って継続させ、
電話や鉄道などの国民生活の基盤をつくり、
今日メキシコシティ中心部の観光で目にすることができる、
いくつかの歴史的建造物も彼の政権下で建設されたのです。
👆いい面だけ書きました。
そんな一応表向きは安定的な国家として歩んでいたメキシコは、
外国人移民を歓迎していて、
これが1897年の榎本移民団で知られる、
日本人移民団第一号のメキシコ渡航につながるのです。
1897年5月10日にチアパス港に上陸した一行は、
このタパチュラ市を経由し、
エスクィントゥラ地方へ向かいます。
そういった意味で、
このタパチュラという都市、
日本人にとってメキシコでの歴史に刻まれた場所であり、
それ故今日もタパチュラ日系クラブという協会も運営されています。
中南米移民の通過地点タパチュラ
で、
そんなメキシコの日系人にとって歴史的な出来事と関係するタパチュラ市。
地理的にはグアテマラ国境があるタリスマン(Talismán)町まで直線距離で14キロ。
それ故中米からの中米からの移民の通過地点になっていて、
特にホンジュラスからの移民が多くみられます。
更にです。
タパチュラ市中心部を歩いていると、
黒人が多いこと。
最初はポツポツと目についたのが、
市場周辺に行くともの凄い数の黒人さんがいるではないですか。
ホンジュラスも黒人が多いですが、
それにしても黒人ばかりが目につきます。
さらに、
ホンジュラス人ならスペイン語だろうと思って会話を聞いていると、
スペイン語じゃない。
そこで頭に過ったのはハイチ人。
昨年1月以降にバイデン政権の人道的観点から、
米国からの強制送還が保留されるという措置が取られました。
そのために米国国境に押し寄せたハイチ人難民がメキシコでも話題になっていました。
確かにスペイン語ではない。
でもハイチってフランス語?でもフランス語にも聞こえない。
彼らは西アフリカ系の言語とフランス語が混ざった混成語(クレール)を話すようです。
タパチュラで気付いたこと
しばらく観察していて気づいたことが一つ。
悲壮感というのが見えず、
なんというかむしろ活発に見えます。
野宿をして汚く臭いというのもなく、
皆さんちゃんとシャワーを浴びて、
洗濯されて破けていない服を着て、
ちゃんと食べているようで恰幅もよく、
かつ笑顔も見られます。(笑)
「いったいどういうことなんじゃ」と、
僕の頭は「?」でいっぱいになります。
過去にも国境地帯で中米からの移民一行と
メキシコの治安部隊の間で衝突があったこと、
そしてあまりにも多くの移民がいるから治安が気になって、
近くにいた警察に聞いたんです。
「あの、この辺、治安は大丈夫なんですかい?」と。
そしたら「物を盗られるだけだから心配ないよ」って返されます。
もちろん冗談で。(苦笑)
そういったタパチュラ市民が不利益を被る治安の悪化というのはなく、
いたって平和的に、
タパチュラ市民と共存しているように見えました。
はい、
「見えました」です。
本当のことは僕にはまだわかりません。
ただの通りすがりの旅行者ですから、
地元の住民にとったら不満もあるのかもしれません。
それはまたいつか別の機会に調べてみたいことであります。
その警察の人曰く、
これでも減ったそうで、
2年ぐらい前はこの3倍はいたとか。
昨年10月だったか、
計3つの移民キャラバンがこのタパチュラを出発し、
北部へ向かいました。
その内1グループからさらにもう1グループが派生し、
計4つの移民キャラバンがメキシコ国内を移動または滞在しているとのこと。
でも、
別の都市ではこうした移民というのはほとんど見ません。
唯一、
今回の秘境チアパスの旅で移民を目にした場所。
ラカンドン北部の道を歩く8人ぐらいの一家でした。
ハイチの青年
ハイチからの移民。
彼らはどんな生活をしているのか。
直接聞いてみることにしました。
スーパーの駐車場で駐車補助をしていた青年ルイス君を呼び止めます。
スペイン語で話しかけると普通にスペイン語で返してくれました。
僕:「どれぐらいタパチュラにいるの?」
ルイス君:「4カ月目だね」
僕:「どこに住んでるの?」
ルイス君:「この近くのアパートだよ。家族と4人で住んでるんだ。」
僕:「そうなんだ。でも家賃大変じゃない?いくら払ってるの?」
ルイス君:「1200ペソ、でも家族4人で折半。」
約7200円ぐらい。
僕:「じゃあ奥さんも働いてるの?子供さんもいるならどうしてるの?」
ルイス君:「いやいや、嫁と子供はハイチだよ。もうしばらく帰れてないけれど、飛行機代が払えないから帰れない。」
僕:「あーそういうことね・・・いつから会ってないの?」
ルイス君:「もうだいぶ前。最初はブラジルに行ったんだよね。みんなブラジルからずっと北上してきて、ペルー、エクアドル、パナマ、コスタリカ、エルサルバドル、グァテマラという国を通ってメキシコまで来てるんだよね。」
事実、2010年の30万人が亡くなったとされるハイチ地震で、多くの人々がブラジルに渡りました。
僕:「マジ!?ブラジルからメキシコまで陸で移動してきたの!?大変だったんだろうね・・・、アメリカに行くの?」
ルイス君:「まだ分からない。タパチュラは住みやすいけれど、稼げないからもう別の場所に行きたいんだよね・・・メキシコシティとか。」
僕:「今どれぐらい稼いでいるの?仕事は?」
ルイス君:「この駐車場の仕事だけだよ。良くて日に100ペソ(600円)とか。それより少ない時もあるけどね。ハイチでは土木やっていたから、土木業に就けたらいいんだけど。」
僕:「そうなんだね・・・頑張ってな。オレは助けてあげられないけれど、きっと報われるさ。ほんとに少しだけど、はいお礼。」
ルイス君:「うん、ありがとう。運転気を付けて。おれ、ルイスっていうから。またね。」
僕:「僕はKOっていうよ。じゃあまたな。」
と、
一瞬ではあったものの、
メキシコで、ハイチ―日本にささやかな友情が芽生えたのでした。
なんか、
ホントに何もできない自分が情けなくなり、
しばらく呆然と運転していたのでした。
これが彼ら移民が生きる現実なのかと。
でも逆に元気をもらったような気もしたのです。
だって、
さっきも書きましたが全然悲壮感がないんですよ。(苦笑)
そう見えるだけなのかもしれませんが、
屈託のない笑顔で、
気さくに話してくれるんです。
むしろ僕がいちいちちっちゃなことで悩んで暗い顔をしていることなんか、
彼らの境遇に比べたら全然比にもならないくらい大したことないようにも思えます。
でも、
もし僕がルイス君をはじめとする、
今日タパチュラに住む多くのハイチやホンジュラス移民の人たちの境遇に置かれたら、
どうなるだろうと、
想像すらできません。
「偉そうに」できません
そんな恵まれた僕が想像すらできない現実もまた「現実」であり、
彼らはそんな現実の中で僕らと同じ、
この地球上で2022年1月8日土曜日を過ごしているのです。
彼らのような境遇を目の当たりにすると、
ほんと、
自分がどれだけ偉そうに生活しているのか、
すごく反省したのでした。
「運命」でたまたま何の努力もせずに、
恵まれた日本という環境に生まれ落ちた自分。
もしその「運命」で生まれた場所がハイチやホンジュラスだったら、
当然自分だって車の運転席じゃなくて、
彼らのようにスーパーの駐車場で、
日銭を数える生活をしていたはず。
だから偉そうにできない。
もし今日この瞬間、
「つまんねぇな~」とか
「死にたい」
なんて思っている人がいたら、
どうするも自分の人生で自分の勝手ですが、
あきらめて自暴自棄になる前に、
一度こういう現実を自分の目で見た方がいいでしょう。
それを目にした後にも本当に同じことが言えるか。
人間の生は一つだけじゃないっていうのがよくわかります。
そしていかに現代の人間の生き方が「~じゃなきゃダメ」という方向に囚われているか。
たかだか100年足らずの人生で、
一度ぐらい、違うものを見て感じて考えてもいいんじゃねぇ?
なんて思った束の間のタパチュラでの滞在。
そんな、
もの凄い、
そしていろんな「現実」が混ざり合う、
とっても明るくも大変な現実が存在する町がタパチュラ。
皆さんはタパチュラで何を感じるでしょう。
ではまた明日。
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