知られてないモナルカ蝶(オオカバマダラ)の境遇・その3
メキシコ在住15年目、
「メキシコの素顔を世界に!」
をモットーに、
メキシコ公認ツアーガイド兼ドライバーの岩﨑コウです。
モナルカ蝶の話・その3
(撮影:岩﨑)
今回が最終回です。
意外と人気が無いシリーズになってしまいました。(苦笑)
蝶が苦手な方が多いのか、
単に皆様の関心が薄いテーマなのか。(謎)
ともあれ大事な事なので、
たぶん来年も懲りずに書いていると思います。(苦笑)
その1、その2が未だの方はこちら☟です。
【モナルカ蝶1】キオテ通信 【モナルカ蝶2】キオテ通信
続きですが、
個体数が減っているのはには、
複数の原因があります。
だから「これ」をやれば解決する、
という単純な話ではないのです。
モナルカ蝶のメスは、
400もの卵を産み落とすと言われています。
卵が産み落とされてから、
約4~8日で孵化し、
幼虫になります。
この幼虫は、
日本語でトウワタ?、
メキシコではアルゴドンシィジョ(Algodoncillo)と呼ばれている植物の葉を食べてスクスクと育ちます。
9日から15日ぐらいで、
茂みの中に隠れ家を探し、
そこで脱皮して緑色のサナギになります。
このサナギの体内では、
驚くべき変化が起こるのです。
脳や心臓、内臓が成虫仕様に変化し、
3組の脚、両目や筋肉、そして羽が発達します。
このサナギでの変化に約2週間。
卵から幼虫、サナギ、成虫になるまで、
約1ヵ月のプロセスです。
成虫になってからも、
このトウワタはモナルカ蝶の大事な食料でして、
成虫になってからは葉ではなく、
樹液を栄養源にします。
で、
このトウワタという植物、
メキシコ、アメリカ、カナダに生息しているものなんですが、
これが極端に減少してしまっているんです。
という事は、
モナルカ蝶の食糧が無くなる=生きられない・・・
なんで減っているのかというと、
この植物、
普通にその辺に雑草として道端や農地に生えているんですが、
毒素を持つもので、
大事な農作物や家畜への害になるという理由で、
駆除の対象になっているんです。
ちなみに、
幼虫の時にこの毒素を体内に取り込み、
それを皮膚に貯蓄するんです。
それは成虫になってからも保持していて、
この毒素により外敵から身を守っているんです。
中には賢い鳥がいて、
この皮膚を食べないように、
中の肉だけを食らうようですが・・・(苦笑)
農地というのは、
主にトウモロコシや大豆です。
近年の需要拡大に伴い、
尚更トウワタの駆除量は増えました。
これには除草剤を使うわけですが、
この“おかげ”でアメリカのトウモロコシの作付け面積は、
7年間で500万ヘクタールも増えたのです。
東京都が20いくつか入る面積ですね。
その一方で、
トウワタは60%も減り、
これによりモナルカ蝶の個体数は99年から2010年までの約10年で80%以上も減少しました。
これに追い打ちを掛けるように、
農地や住宅地の拡大、
彼らが生まれる森の減少、
そして地球温暖化です。
35度近くになると死滅する確率が限りなく高くなります。
現に2013~14年は、
117年の観測史上で最高の平均気温を記録し、
実際にメキシコでのモナルカ蝶の生息域は最小となりました。
減少の原因を纏めると、
1. 食料であるトウワタの激減
2. 森林破壊
3. 気温の上昇
これにプラスで、
森への過剰な観光客の流入により、
彼らがソワソワして必要以上に羽を休ますことができず、
それまでに蓄えた脂肪=エネルギーを使ってしまい、
春に産卵の為に北へ戻ることが出来ないのです。
☝だから僕としては「困惑」しているのです。
お客様に見て頂きたいメキシコの自然現象なのですが、
彼らの森に入る=彼らの繁殖に影響しかねないからです。
一度絶滅した生物は元には戻りません。
地球規模で進む温暖化や、
プラゴミ問題、
森林破壊と薬品による土壌水質汚濁。
これら全ては人間の“豊かさ”を追及した結果に起っている事です。
豊かさを追求した挙句に、
様々な弊害出ているのは明白です。
その一つがモナルカ蝶の絶滅の懸念です。
自然はウソをつきません。
痛めただけ、
その分痛みとして人間に返ってくるでしょう。
そこまでして、
物質的・経済的な“発展”を望みたいですか?
そもそもそれは“発展”とは呼べません。
私達の母体でもある自然がなおざりにされ、
「人間の欲望や都合」が優先され、
必ずどこかで痛みが生じているのです。
必要以上のモノやサービスへの追及を一度見直し、
極普通に身の回りにある自然に目を向けてみるべきです。
自然は雄大です。
大金を出さないと手に入らないようなモノなど、
ちっぽけなものに見ます。
自然を凌駕するものはありません。
だからこそ、
自然の一部として、
いや人間は元々自然一部、
必要以上に環境負荷をかけずに、
自然の恵みを有難く享受し、
そしてそれを自然に還元して生きていこうではないですか。
その先にはきっと、
本当の「豊かさ」がある筈です。
3回に渡る長編でしたが、
少なくても僕にとっては大事なテーマであるだけに、
ここまで読んで頂いた方々に深くお礼申し上げます。
(撮影:岩﨑)
#MexicoCentralTours
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