メキシコの「死者の日(Día de Muertos)」と言えば、鮮やかなオレンジ色の花とガイコツ。

街中に飾られる花々、祭壇に並ぶ食べ物、そして色とりどりのガイコツたち。

でも、なぜ死者の日には特定の花を供え、ガイコツを飾るのでしょうか?

実は、これらの習慣にも古代メキシコの世界観と、スペイン人が持ち込んだカトリック文化が関わっています。

今回は、死者の日を象徴する花「センパスチル」とガイコツを中心に、その歴史と意味を掘り下げてみたいと思います。

死者の日の花センパスチルの畑
センパスチル畑

前回はこちら

【メキシコの死者の日】ハロウィンとの違いとは?起源と世界無形文化遺産の理由

メキシコを代表する伝統行事「死者の日(Día de Muertos)」。 色鮮やかな祭壇やガイコツの飾り、華やかなパレードなど、今では世界中から観光客が訪れる人気イベントです…

なぜ死者の日にはセンパスチルの花を供えるのか?

メキシコの死者の日に欠かせないのが、鮮やかなオレンジ色の花「センパスチル(Cempasúchil)」。

日本などではマリーゴールドとして知られる花の仲間です。

その名前はナワトル語の「センポウァルショチトゥル(Cempohualxóchitl)」に由来し、「20の花」という意味があります。

古代メキシコで重要だった数字「20」

実は、この「20」という数字、古代メソアメリカの文化では重要な数字だったんです。

例えば、メシカの暦では、

20日 × 18期間 + 5日 = 365日

これが「シウポウァリ(Xiuhpohualli)」と呼ばれる365日の暦です。

また、祭祀暦の「トナルポウァリ(Tonalpohualli)」では、

13 × 20 = 260日

という周期が使われていました。

マヤ文明の暦でも、20進法を基本とする数え方が見られます。

例えばロング・カウント(長期暦)では、

  • 1ハァブ=360日
  • 1カトゥン=7,200日
  • 1バクトゥン=144,000日

などという単位が使われます。

つまり、古代メソアメリカでは「20」を基本とした数の体系が広く使われていたわけです。

👇 こちらはマヤの数字。0から19まで、全部で20種類の数字を表しています。

センパスチルは死者を導く花?

センパスチルはメキシコ原産の花で、ちょうど死者の日を迎える秋に美しく咲き誇ります。

季節が終われば枯れてしまいますが、残された種子から翌年また新しい生命が生まれます。

こうした植物の生命の循環は、古代メキシコの「生と死」の世界観にも通じるものがあります。

また、センパスチルはその鮮やかな色から、古くから太陽と結びつけられてきたという説もあります。

死者の日には、花びらを地面に敷き詰め、亡くなった人々の魂が迷わず家に戻れるように道を作り、その色や香りが、死者を導くと言われています。

しかし、これというのも古代の習慣ではなく、比較的新しい文化的要素とされています。

死者の日はどのようにカトリック文化と融合したのか?

さて、前回の記事でも触れましたが、現在のメキシコの死者の日は、長い歴史の中で異なる文化が重なり合って形成されました。

古代メキシコでは、トウモロコシをはじめ、グアバ、サボテンの実、テホコテといった果物や、タマル、モレなどの料理がお供えされました。

しかし、古代から現在のような階段状の祭壇や写真、砂糖で作ったガイコツは存在していませんでした。

スペイン人が到来する以前の死者を敬う儀礼は、現在とは異なる姿をし、今と比較すればとても「質素なもの」だったんです。

スペイン人による先住民の改宗

16世紀、スペイン人がメキシコへやって来ると、カトリックの布教が進められました。

しかし、それまで信じていた神々や習慣を、いきなり捨てられるはずもありません。

そこで宣教師たちは、先住民が大切にしていた習慣や祭りを利用しながら、カトリックの教えを広めていきました。

いわば、既存の習慣を利用した「信仰の置き換え」です。

カトリックには、11月1日の「諸聖人の日」と11月2日の「成人の死者の日」があります。

スペイン人の到来前に、この秋の時期に「死者」を新たな「生」の誕生へとつなげるための習慣が行われており、スペイン人がカトリックのカレンダーに充てめたのです。

クリスマスにも見られる文化の置き換え

こうした布教の方法は、死者の日だけに限った話ではありません。

例えば、メキシコのクリスマスに欠かせない「ポサダ(Posada)」。

16世紀、宣教師たちは先住民への布教のため、12月にキリストの誕生に関する宗教行事を行いました。

特に有名なのが、メキシコシティ近郊のアコルマン(Acolman)です。

ここではアウグスティノ会の修道士たちによって、後のポサダにつながる行事が広められました。

アコルマン教会
アコルマンの旧修道院

そして、この行事と結びついて普及したのが、あの「ピニャタ」です。

もともとは陶器の壺を使い、七つの突起が七つの大罪を表すなど、カトリックの教えを伝える道具としても利用されました。

昔のピニャタは陶器でした

ちなみに、2月2日の「カンデラリア祭」も、現在のメキシコではタマルを食べる習慣など、地域の食文化や農耕の伝統と結びついています。

このように、メキシコの年中行事には、カトリックと先住民文化が重なり合った例が数多く見られるんです。

メキシコのガイコツ「カラベリタ」と「カトリナ」の違い

さて、死者の日と言えば、やっぱりガイコツですね。(笑)

ハロウィンでもガイコツを使った仮装を見かけますが、メキシコのガイコツには独自の文化があります。

特に有名なのが、

  • カラベリタ(Calaverita)
  • カトリナ(Catrina)

どちらもガイコツですが、その意味や成り立ちは異なります。

カラベリタは砂糖で作った小さなガイコツ

カラベリタは、スペイン語で「小さなガイコツ」という意味です。

死者の日には、砂糖などで作った色鮮やかなガイコツを祭壇に供えます。

祭壇のカラベリタ

こうした砂糖菓子には、ヨーロッパから伝わった製菓文化の影響が見られます。

一方、古代メソアメリカにも頭蓋骨を宗教的象徴として扱う文化がありました。

国立人類学博物館の展示物の中にもガイコツがあります。ガイコツ台もあります。レリーフもあります。

ただし、古代の頭蓋骨と、現在の砂糖菓子のカラベリタを同じものと考えることはできません。

古代メキシコにもガイコツを飾る習慣があった?

古代メキシコの頭蓋骨文化で有名なのが、「ツォンパントゥリ(Tzompantli)」です。

これは、生贄として捧げられた人々の頭蓋骨を並べて展示するための構造物でした。

ただこれは宗教的な意味合いというよりも政治的な権威や力を示す意味合いが強かったとされます。

これは亡くなった家族を迎えるために砂糖のガイコツを供える習慣とは別のものです。

ヨーロッパから伝わった「死の勝利」の象徴

では、現在のメキシコのガイコツ文化には、どのようなヨーロッパの影響があるのでしょうか?

ここで登場するのが、カタファルコ(Catafalco)と呼ばれる棺台です。

カトリックの葬儀や死者の追悼行事では、棺台や教会の装飾にガイコツや骨のモチーフが使われていました。

メキシコ,観光,ツアー,ガイド,死者の日
カタファルコに見られるガイコツ

こうした表現には、誰もが必ず死を迎えるという「メメント・モリ」の思想が関わっています。

王様でも大統領でも、大企業の社長でも、普通の人でも。

どんなに地位や財産があっても、死だけは誰にでも訪れる。

これは人間に共通する、避けられない現実です。

一方、キリスト教には、死を超えた復活や永遠の生命という信仰があります。

ヨーロッパでは「死の勝利(Triunfo de la Muerte)」という表現に発展しました。

こうした死に関する象徴や宗教観が、スペイン統治時代のメキシコにも伝わったわけです。

メキシコ,観光,ツアー,ガイド,死者の日,祭壇
現代のカタファルコにもガイコツが立つ

メキシコの死の神「ミクトランテクトリ」

一方、古代メキシコにも死と深く関わる神がいました。

それが、メシカの地下世界「ミクトラン(Mictlan)」を支配する神、ミクトランテクトリ(Mictlantecuhtli)です。

テオティワカンで発見されたメシカ時代のミクトランテクトリ
テンプロマヨール博物館に展示されているミクトランテクトリ

ご覧のように、古代メキシコにも骨や骸骨の姿で表現される死の神が存在していました。

ヨーロッパの死の象徴と、メソアメリカの死生観。

ただ、メソアメリカの「ガイコツ」が現代のガイコツ文化に影響を及ぼしているとは考えにくい、というのが僕の見解です。

上記のヨーロッパの文化、そして現代アートが基になっていると思われます。

だからメキシコの死者の日は面白い

こうして見てみると、センパスチルの花も、祭壇も、ガイコツも、それぞれ異なる歴史を持っていることがわかります。

古代メキシコの世界観、スペイン人が持ち込んだカトリック文化、そして時代とともに発展してきたメキシコ独自の習慣。

それらが幾重にも重なり、現在の華やかな死者の日を形作っているんですね。

単に「昔から続く伝統だから」と片付けてしまうには、あまりにも奥が深い文化です。

旅行でメキシコの死者の日を訪れる際にも、こうした背景を少し知っているだけで、祭壇や墓地の風景が違って見えるのではないでしょうか。

では、メキシコの死者の日でお会いしましょう~

関連ツアー

【死者の日ツアー】本物の「死者の日」を体験するメキシコツアー 9日間~

ミチョアカン・オアハカ・メキシコシティ死者の日文化周遊ツアー年1回・ご案内枠限定|2027年~2029年受付中 点ではなく、線で体験。ただの「死者の日」で終わらない、一…

初めてのメキシコ旅行で不安な方へ

とはいっても、知らないメキシコで個人で対策しても心配・・・
そんな方は、メキシコ政府公認ガイドの岩﨑功にお任せください。安心して楽しい体験だけに集中していただけます。

SNSにてメキシコの写真と動画を多数アップしています!

20年に渡りメキシコの社会にどっぷり浸かり生活している私から見た「メキシコの素顔」を、文章、写真、動画でご紹介しております。「飾らないメキシコ」をほぼ毎日撮り続けて1500投稿以上、日本語のメキシコ関連では最大規模のSNS!Mexico Complete Travel でも検索🔍いただけます。ぜひフォローをお願いします!

人生のリバイバルコーチング事業

私岩﨑はICF(インターナショナル・コーチング・フェデレーション)認定ライフコーチング業も営んでいます。
皆さんが一度限りの人生、限りある人生を有意義に生きられるようお手伝いさせて頂きます。
詳しくはこちらのホームページをご覧ください。