気が付けば、もう10月も半ば。
ついこの前、40歳の誕生日を迎えたばかりかと思っていたら、もう4年物月日が過ぎていました。
油断していると、あっという間に人生が終わってしまうとは、まさにこのこと。(苦笑)
別に、いつも忙しくセカセカと生活する必要はないと思うんです。
でも、ゆったりと過ごしていても、時間は刻一刻と過ぎていきます。
お金を払ってでも大切にしたいもの。それが「時間」なのだと、この歳になってより一層考えるようになりました。
さて、そんな時間の大切さを考えているうちに、メキシコの伝統行事「死者の日(Día de Muertos)」も、あと1週間ほどに迫ってきました。
今回は、死者の日を理解するうえで欠かせない、メキシコという国の文化についてお話ししたいと思います。

メキシコは広くて、複雑な国なんです
以前、ツアーに参加されたお客様から、こんなお言葉をいただきました。
「やっぱり、岩﨑さんに任せてよかった~」
別に、自分で自分を褒めているわけじゃありません。
そのお客様は、当初ご自身でメキシコの現地情報を調べ、旅行を計画されていたそうです。
海外旅行の経験も豊富な方でしたが、調べれば調べるほど、なかなか思うようにいかなかったとのこと。
そして一言。
「メキシコを舐めてました」
それだけメキシコは広く、複雑な国ということなんです。
地理的な広さはもちろんですが、歴史や文化、民族、言語、宗教など、さまざまな要素が複雑に重なり合っています。
その複雑さを象徴しているものの一つが、今回ご紹介する「死者の日」です。
メキシコ文化を理解する鍵は「融合」
現在のメキシコに根付いている文化や習慣の多くは、異なる文化が出会い、影響し合うことで形成されてきました。
これを理解するうえで重要なのが、シンクレティズム(Sincretismo=宗教や文化の習合・融合)という概念です。
例えば、言葉、食べ物、宗教、そして人々のルーツも。
メキシコは、先住民文化とヨーロッパ文化、そしてアジア文化まで、さまざまな要素が重なり合って生まれた国なんです。
メキシコという国名も先住民の言葉
「メキシコ」という国名はスペイン語だと思われがちですが、その語源は先住民の言語であるナワトル語にあります。
もともとは「Mēxihco(メシコ)」というメシカ族の地名で、スペイン語では現在の「México(メヒコ)」という形になりました。
普段何気なく使っている国名にも、先住民文化とスペイン語の歴史が残っているんですね。
メキシコ料理にも文化の融合が
例えば、メキシコ料理の「ポソレ(Pozole)」。
トウモロコシを使った伝統的なスープで、現在は豚肉や鶏肉を使うのが一般的です。
そのルーツはスペイン人が到来する以前に遡り、古代の儀礼と関わる食べ物でもありました。
元々は「人肉」を使っていたこの料理、
もちろん現在使われている肉は人肉ではなく(汗笑)豚や鶏で、これらはスペイン人によって持ち込まれた家畜です。
つまり、メキシコを代表する料理の一つにも、時代の変化と文化の重なりが見られるわけです。
宗教にも見られるメキシコ独自の文化
メキシコの宗教と言えば、カトリックが有名です。
しかし、その信仰のあり方にもメキシコ独自の特徴があります。
代表的なのが、「褐色の聖母」と日本の人たちには知られる「マリア・グアダルーペ(Virgen de Guadalupe)」で、メキシコの歴史や国民的なアイデンティティとも深く結びついています。
ヨーロッパから伝わった信仰が、メキシコという土地で、現代のメキシコ国民の約8割の人達の精神的基盤になるには、メシカ時代の信仰とも密接に関係した信仰のカタチなのです。
カトリックとメシカ時代の信仰がどこでどうつながるのか。その一端が「死者の日」でもあるわけです。
死者の日のガイコツは古代からの伝統?
さて、ここから本題です。
メキシコの「死者の日」と言えば、何を思い浮かべるでしょうか?
おそらく、ガイコツを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
そして、骸骨風のペイントや仮装ではないでしょうか。
果たして、メシカ時代(500年以上前)以前から、当日の人々は骸骨風に仮装して、祭壇に骸骨を置きまくっていたのでしょうか?
結論:いいえ。
現在の死者の日を象徴する、あの華やかなガイコツの姿が、古代メソアメリカからそのまま受け継がれてきたわけではありません。
もちろん、古代メキシコの一部の習慣では、頭蓋骨は宗教的に重要な意味を持っていたことが、人類学博物館の展示品や、遠くはマヤのレリーフからもわかります。
しかし、現在の死者の日の飾りや仮装には、近代アートの影響が大きいのです。
カラベラ・ガルバンセラからカトリナへ
その代表が、今では死者の日の象徴となっている「カトリナ(La Catrina)」です。
おしゃれなヨーロッパ貴族のような恰好をしたガイコツですね。
これ、もともとはメキシコの版画家ホセ・グアダルーペ・ポサダが描いたガイコツの風刺画「カラベラ・ガルバンセラ(Calavera Garbancera)」に由来します。
記録によると、この作品は1913年に印刷物として登場し、当時の社会や見栄を張る人々を皮肉ったものでした。
↑これ、僕には今の日本のように思える社会現象なんです。詳しくはメキシコで。
その後、画家ディエゴ・リベラが1947年完成の壁画に描き、「カトリナ」として広く知られるようになります。
そして時代が進み、80年代に死者の日を象徴する存在になっていったわけです。
つまり、現在の死者の日を代表するガイコツのイメージには、比較的新しい歴史があるということです。
映画『リメンバー・ミー』の世界は昔からあった?
映画『リメンバー・ミー』をご覧になった方も多いでしょう。
カラフルな祭壇、ガイコツ、死者の世界。
メキシコの文化が美しく描かれた作品です。
ただ、あの光景を見て、
「これが何百年も前から変わらず受け継がれてきたメキシコの姿なんだ!」
と考えてしまうのは、ちょっと無理があるんですね。(苦笑)
「メキシコの死者の日行けば、ディズニーの世界に出会える!」なんて思いこんでメキシコに行くのは危険です。(汗笑)
現在の死者の日は、先住民の死生観とそれに基づく宗教的習慣、カトリック文化、近代の社会現象とアート、そして地域ごとの習慣などが、長い時間をかけて重なり合ってきたものです。
死者の日の成立については研究者の間でも異なる見解がありますが、少なくとも、現在目にするすべての要素が古代から変わらず存在していたわけではありません。
「ハロウィン」と「死者の日」は同じもの?
そして、もう一つ驚くのが、メキシコの死者の日とハロウィンをごっちゃにしている人がもの凄く多いこと。(苦笑)
メキシコの死者の日に行ったことがある人で、ハロウィンと死者の日の違いを説明できる人って、いるんですかね?
これ、笑い事ではなくて、メキシコの人でも知らない人が多いと思います。
確かに、ハロウィンは10月31日、メキシコの死者の日は11月1日と2日が中心です。
日付も近く、死者やガイコツ、仮装など、イメージも近い要素があります。
しかもどちらも「死者」「仮装」と、ちょっと「おっかない系」ですしね。(苦笑)
でも、ハロウィンとメキシコの死者の日は、本質的には異なる行事です。
ハロウィンはヨーロッパのケルト族の習慣やキリスト教と関わりながら発展してきました。
一方、メキシコの死者の日は、メキシコの先住民の死者を敬う習慣と、スペインから伝わったカトリックの行事などが関わりながら、独自の文化として発展してきました。
現代では仮装や商業イベントなどを通じて似たような光景が見られますが、その背景にある歴史や意味は同じではありません。
では、そもそもハロウィンとは何なのか?
そして、メキシコの死者の日は、どのような歴史を経て現在の姿になったのか?
そのお話は、次回に続きます~(笑)
続編:【メキシコの死者の日】ハロウィンとの違いと歴史・文化を解説
ではまた~
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