メキシコ北部にあるチワワ州。
多くの旅行者にとっては、チェペ鉄道や銅渓谷へ向かう通過点という印象かもしれません。
しかし実はこの町には、現在のメキシコという国の始まりを語るうえで欠かせない歴史の舞台があります。
メキシコシティから約1,500km離れたこの地で、独立運動を象徴するある出来事が起こりました。
今回は、一般的な観光ガイドではあまり紹介されない「チワワ市の歴史」を、実際に現地を訪れながらご紹介します。

チワワ市とは
「チワワ」と聞くと、小さな犬を思い浮かべる方も多いでしょう。
今回は犬ではなく、チワワ州の州都・チワワ市のお話です。
アメリカと国境を接するチワワ州は、メキシコ最北部に位置する州の一つ。
メキシコシティからは陸路で約1,500km。運転好きなら1日で走れなくもありませんが、普通はそんな我慢大会のような移動はしません。(笑)
そのため、99.999%の外国人旅行者は飛行機で訪れるでしょう。
100%ではないのは、僕のように車で旅をする人も、ごくたまにいると思うからです。
10年ほど前には治安の悪化で世界的にも話題になりましたが、現在も地域によって状況は異なります。チワワ市中心部は比較的落ち着いているため、必要以上に心配する必要はありません。
チワワ市にある歴史的な場所
正直なところ、よほどのメキシコ史好きでもない限り、「チワワ市そのものを目的地にしたい」という旅行者は少ないでしょう。
多くの人はチェペ鉄道に乗る前後に立ち寄る程度かもしれません。
でも僕には、この町でどうしても訪れたかった場所がありました。
妻には少し呆れられながらも(笑)、迷うことなく向かったのがこちら。
Palacio de Gobierno(州政府庁舎)です。

日本で言えば県庁のような建物ですが、建物そのものが目的ではありません。
19世紀に建てられたこの場所は、かつて教会が建っていた土地であり、メキシコ史を大きく動かした人物が処刑された場所でもあるのです。

僕は昔から、歴史上の人物が生き、そして最期を迎えた場所に強く惹かれます。
「ここで生まれた。」
「ここで処刑された。」
そんな事実を知るだけで、その時代の出来事が頭の中で映像になっていく感覚があります。
いつかヨーロッパを旅したい理由も、有名観光地ではなく歴史上の人物のお墓やゆかりの地を巡ってみたいから。
遺跡も史跡も同じですが、自分の頭の中でどれだけ当時の風景を思い描けるかが旅を何倍も面白くしてくれます。
補足:
なお、ここで僕が「メキシコの歴史」と呼んでいるのは、1519年以降、スペイン人が到来して文字による史料が残る時代です。
マヤやアステカなど先住文明はもちろん重要ですが、文字資料が限られ、考古学の要素が非常に強い世界。
マヤ・アステカなどの古代と、大航海時代のスペイン人の到来、どちらも「歴史」なのですが、
メキシコでは「考古学」と「歴史学」というは1521年を境に分けられています。
もちろん、当時はそんなに明確に線引きが行われたわけではありません。
実際に1519年にスペイン人が来てから、アステカの首都テノチティトランが陥落するまで2年を要しています。
あくまで、この線引きは歴史学上の区分です。
大事件が起こった現場に行きたかった
ちょっと話が脱線しましたが、チワワ市もメキシコ史上ある大事件が起こった場所。
チワワ市が特別な理由は、この場所でメキシコ独立運動を象徴する人物が処刑されたからです。
その人物とは、ミゲル・イダルゴ(Miguel Hidalgo)。

グアナファト州にあるドローレス・イダルゴの教会で司教を務めていた人物です。
1810年9月16日未明。
教会前に集まった人々へ向けて蜂起を呼びかけ、約300年間続いたスペイン植民地支配に終止符を打つきっかけを作りました。

この出来事こそが、現在も毎年祝われるメキシコ独立記念日の始まりです。
その後、イダルゴは捕らえられ、このチワワ市で処刑されました。


だからこそ、ここは単なる地方都市ではなく、メキシコという国の原点を語るうえで欠かせない場所なのです。
なぜ大事?

もしイダルゴが立ち上がっていなかったら。
もし1810年9月16日に武装蜂起が起こっていなかったら。
今のメキシコは、全く違う姿になっていたかもしれません。
スペイン領のままだった可能性もありますし、南米のフランス領ギアナのように、ヨーロッパの海外領土として残っていた未来も考えられます。
もちろん歴史に「もし」はありません。
それでも、一人の行動が国の未来を変えたことだけは間違いありません。
チワワ市は、その歴史の転換点を実際に感じられる貴重な場所。
有名観光地ではありませんが、メキシコの歴史に興味がある方には、一度は訪れていただきたい町です。
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実際に現地へ
メキシコ旅行は、遺跡や絶景だけを巡る旅でも十分楽しめます。
でも、その土地で何が起こり、なぜ今のメキシコにつながっているのかを知ると、一つひとつの景色がまったく違って見えてきます。
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