「オアハカに行くなら、メキシコに行くなら、あの可愛いアレブリヘスを絶対買いたい!」

そう意気込んでいる方に、メキシコプロガイドから一つ忠告です。

背景を知らずに買うと、確実に損をします。

なぜなら今、観光客向けの「粗悪なコピー品」が売られているだけでなく、そもそも「アレブリヘス」自体はオアハカ発祥ではないからです。

買う前にに知っておくべきルーツをサクッと解説します。

メキシコのオアハカのアレブリヘスという木彫り民芸品
いいものだと数十万円する

背景を知ってから買って欲しい理由

動物のような、人のような、不思議な形に色鮮やかな模様が施されたメキシコの置物を見たことはありませんか?

これは一般的に「アレブリヘス(Alebrijes)」と呼ばれる伝統民芸品で、今やメキシコを代表するアートとして世界中に輸出されています。

しかし近年、この人気に便乗して海外から粗悪なコピー品が輸入され、背景を知らない外国人観光客に安値で売られているという悲しい噂もあります。「カワイイ!」「キレイ!」といった上辺のデザインだけが注目され、本来の価値が置き去りにされているのが現状です。

民芸品において本当に大切なのは、見た目よりも「中身」です。なぜその形なのか?なぜメキシコ・オアハカで作られるのか?その根拠や背景を知らなければ、固有の民芸品としての本当の価値は分かりません。

今回は、皆さんに「本物」の価値を知っていただくため、アレブリヘスの知られざる歴史とルーツについて解説します。

衝撃の事実!元祖アレブリヘスは「オアハカ発祥」ではない

「オアハカと言えばアレブリヘス」と広く知られていますが、実は元祖アレブリヘスはオアハカの民芸品ではありません。

発明者は、首都メキシコシティ出身のペドロ・リナレス・ロペス(Pedro Linares Lopez)さんという紙細工職人です。水でふやかした紙と糊を練って形を作る「パペル・マチェ(Papel Maché)」という技法で作られました。

誕生のきっかけは、彼が30歳の時(1930年代)に見た「奇跡の夢」でした。

  • 重い病気で生死を彷徨っていたペドロさんは、夢の中で不思議な森を歩いていました。
  • そこには、羽の生えたロバ、犬の頭を持つライオンなど、見たこともない奇妙な生き物たちがいました。
  • 生き物たちは一斉に「アレブリヘ、アレブリヘ!」と叫んでいました。
  • 彼らに導かれて森の出口にたどり着いた瞬間、ペドロさんは奇跡的に目を覚まし、病気を克服したのです。

彼はこの体験を世界の人と共有するため、自身の紙細工の技術を使って夢の中の生き物を再現し、夢で聞いた「アレブリヘ」という謎の言葉を名付けました。

「アレブリヘ」の語源とは?
実は正確な意味は解明されていません。「Alegria(活力)+Bruja(魔女)+Embije(ペイント)=活力でペイントされた魔女」という説や、「Alebrarse(床に伏せる)」から来ているという説など、様々な憶測が飛び交っています。

なぜ「オアハカの木彫り」として有名になったのか?

オアハカのアラソラのマヌエルさんとペドロさん
マヌエルさんとペドロさん

では、なぜメキシコシティの紙細工が、オアハカの木彫りとして有名になったのでしょうか?

それは、オアハカ州サン・アントニオ・アラソラ村の木彫り職人、マヌエル・ヒメネス・ラミレス(Manuel Jimenez Ramirez)さんとの出会いがきっかけです。

二人はニューヨークの展覧会で出会い、ペドロさんの「アレブリヘスの不思議なデザイン」と、マヌエルさんの「オアハカの伝統的な木彫り技術」が見事に融合したのです。

オアハカの精霊信仰「ナワル」と「トナ」

さらに、オアハカの木彫りには、現地の先住民であるサポテコ族の深い精神世界が込められています。それが「ナワル(Nahual)」「トナ(Tona)」というコンセプトです。

  • ナワル(Nahual) 人間と動物(自然)は表裏一体であるという考え方。シャーマンのように、動物と一体化して神の世界と繋がる存在を指します。
  • トナ(Tona) 人間の誕生日によって決まる「守護動物」のこと。昔のオアハカでは、赤ちゃんのいる家の周りに石灰の粉をまき、翌朝に残っていた野生動物の足跡を見て、その子を守る神聖な動物(トナ)を決めるという風習がありました。

現代でも、現地の工房に自分の誕生日を伝えると、サポテコ暦に基づいた自分の「トナ(守護動物)」を教えてもらうことができます。

正式名称は「トナス・イ・ナワレス」

アレブリヘス
有名工房の表記

こうした歴史と文化の背景から、オアハカで作られる木彫りの置物は、ペドロさんの元祖紙細工(アレブリヘス)と区別するため、正式には「トナス・イ・ナワレス(Tonas y Nahuales)」と呼ばれています。

しかし、現在アート市場では「アレブリヘ(Alebrije)」という言葉がブランドとしてあまりにも世界中に浸透してしまったため、現地の職人たちも正式名称とブランド名を併記して販売することが多くなりました。

カラフルで可愛いメキシコのお土産。でも、その背景には「職人の奇跡の夢」と「オアハカの精霊信仰」という深い歴史が刻まれています。

「元祖アレブリヘス(紙細工)」と「トナス・イ・ナワレス(オアハカの木彫り)」は本来違うものである。

このストーリーを知った上で作品を手に取れば、あなたにとってその民芸品は、きっと何倍も価値のある「一生の宝物」になるはずです。

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